さきたま国際学院

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DXへの取り組み

1. 経営ビジョン

当社は、「日本語教育を通じて、外国人材が日本社会に確かに定着し、活躍できる未来をつくる」ことを経営ビジョンとし、埼玉県行田市を拠点に、日本語学校の経営・運営、外国人留学生の教育及び生活補助等の事業を展開しています。

日本国内では、少子高齢化に伴う労働力不足を背景に、外国人材の受入れ拡大と日本語教育の充実が社会的な課題となっています。日本語学校は、留学生等が日本語能力を習得し、日本社会・地域コミュニティへ円滑に適応していくための重要な役割を担っており、教育の質の維持・向上と学生一人ひとりへの丁寧な対応が強く求められています。一方で、多くの日本語学校では、学生管理・在留資格対応・進路支援等の業務が紙媒体を中心としたアナログ運営に留まり、情報が教職員間で分散し、対応が担当者個人の経験に依存しやすいという構造的な課題を抱えています。

当社は、この課題に対し、単なるITツールの導入ではなく、教育提供のあり方そのもの、及び教職員の働き方・情報共有のあり方を、データとデジタル技術によって変革することを重視しています。

2. 情報処理技術の活用の方向性

当社は、クラウド型の共同編集基盤を基軸に据え、教育・業務の両面でリアルタイムな情報共有と協働ができる環境づくりをDXの基本方針としています。また、教務・事務それぞれの業務特性に応じたAIツールを適正に配置し、活用研修を通じて全社員がAIを使いこなせる環境を整備しています。当社は、経営陣主導のトップダウンな形式的デジタル化にとどめず、現場の従業員が自発的にDXに取り組める組織文化を醸成することを重視しており、これにより世代を問わず全社員がAI活用に前向きに取り組める体制を実現しています。この方向性のもと、これまで当社が蓄積してきた日本語学校運営・留学生対応の知見を活かし、留学生の資格外活動許可管理アプリを自社開発・販売する新規事業にも取り組みます。

3. DX戦略

当社は、経営ビジョンの実現に向け、以下の3本柱でDX戦略を推進します。

3-1. 新規事業:資格外活動許可管理アプリの開発・販売

留学生が日本でアルバイト等の資格外活動を行うには、入管法上の資格外活動許可を得た上で、週28時間以内という就労時間の上限を遵守する必要があります。しかし、この管理を専門に扱う汎用的なシステムは一般に見当たらず、多くの日本語学校では紙・Excel等による属人的な管理にとどまっています。資格外活動許可の考え方は、複数のアルバイト先を掛け持ちする場合の合算管理や、学校の長期休業期間中の特例(週40時間まで拡大等)を含め制度が複雑であり、学生自身が正確に把握し自己管理することは容易ではありません。加えて、受け入れ側の日本企業においても、この制度への理解が不十分であったり管理がずさんであったりするケースがあり、その結果生じる就労時間超過等のリスクやペナルティは、雇用主ではなく学生自身が負うことになりかねません。こうした状況は、学生が日本で安全に学び、生活していく上で看過できない問題であるとともに、外国人材の受け入れを進める日本社会全体が、受け入れる側としての管理体制を十分に整えられていないことを示す構造的な課題でもあります。

現状、資格外活動許可に関する問題(就労時間超過等)が発覚した場合、当該学生の1年分の就労データを、紙媒体の記録に加え、税務署・市役所等の公的機関への照会、学生のアルバイト先への聞き取り等を通じて個別に収集・再構成し、問題点を洗い出したうえで法務省(出入国在留管理庁)への対応を行う必要があり、この一連の対応に事務員1名あたり約3週間を要しています。さらに、資格外活動許可に関する問題は在留資格の更新・変更のタイミングで顕在化しやすいという性質があり、同一時期に複数の学生で問題が同時発生する可能性が構造的に高いという課題があります。現状の対応能力では、同時期に10件を超える問題が発生した場合、実務上対応が不可能となるリスクを抱えており、学生定員350名規模への拡大に伴い、この構造的リスクは一層高まることが見込まれます。

当アプリの目的は、第一に問題の発生自体を未然に防止することにあります。その上で、万一就労時間超過等の兆候が生じた場合には、その時点で即座に是正措置を講じることで、問題が深刻化する前に収束させます。仮にこの段階でも収束しきれず、最終的な調査・是正対応が必要になった場合であっても、既にアプリ上にデータが蓄積・構造化されているため、公的機関への照会や聞き取りからの再構成が不要となり、対応期間は2〜3日程度に短縮できると見込んでいます。これにより、同時多発的な問題発生時にも対応可能な体制を実現します。当社は、この課題を自校の学生を守るための取り組みにとどまらず、業界全体・社会全体として解決すべき課題と捉え、これまでの日本語学校運営で蓄積した知見を活かし、他の日本語学校等へもアプリを展開・販売していきます。(開発は株式会社civichubと連携)

3-2. 教育のDX化

教育のDX化の主軸は、業務効率化と、その評価による学生への還元にあります。日本語教育においては、聴解・会話・読解・作文といった技能ごとに習熟度が異なり、かつ学生ごとに到達スピードが異なるため、担当講師の主観的な所感のみに頼った指導では、個々の学生が目標のカリキュラムに確実に到達しているかを客観的に把握することが難しいという課題があります。当校は、この課題に対し、試験結果・出席状況・技能別の到達度等の学生データをデジタル化し、蓄積・分析できる体制を構築しています。これにより、学生一人ひとりの技能別の伸び・つまずきをデータとして可視化し、カリキュラムの進度や個別指導の必要性を的確に判断できるようにするとともに、講師間で学生の状況を共有し、属人的な指導のばらつきを抑えることを目指しています。

評価の方向性としては、従来型の知識確認を目的としたペーパー試験について、既にデジタル化による判定業務の効率化を実施しています。ここにMDM(モバイルデバイス管理)制御下のiPadを導入することで、より効率的な試験運営を実現します。会話能力の評価についても、今後導入するiPadの活用により大きく発展させられると見込んでいます。また、現状はペーパーで行っている作文・記述の評価についても、デジタル処理により評価の効率化が可能と考えています。

こうして得られた評価データは、iPad・Google Workspace・Apple Classroomといった適切な媒体を通じて、学生へシームレスに還元できるよう設計しています。これにより、教育のDX化を単なる業務効率化にとどめず、学生一人ひとりの学習成果への還元という教育の本質的な価値向上に結びつけています。導入は年内に順次進めていきます。

3-3. 業務のDX化

当校は、クラウド基盤とAI活用を組み合わせ、事務・教育双方の業務プロセスを高度化するDX戦略を推進しています。

3-3-1. クラウド共同編集基盤による情報共有の効率化

Google Workspace(Chat・Meet・ドライブ・スプレッドシート・ドキュメント・スライド)を、教育部・事務部が共通して利用する情報基盤と位置づけ、同一システム上でのリアルタイムな共同編集・確認を行う体制を整備しています。これにより、従来は個別のファイルやメールのやり取りに依存していた確認・修正作業の往復時間を大幅に削減しています。

3-3-2. 業務特性に応じたAI活用

教務にはChatGPT、事務にはClaudeというように、業務特性に応じたAIツールを適正に配布し、使用方法に関する研修を定期的に実施しています。これにより、若手からベテランまで世代を問わずAI活用への抵抗感のない組織風土を実現し、職員自身が新たな業務改善の発想を生み出す土壌となっています。

3-3-3. タスク・スケジュール管理の一元化

案件・スケジュール・書類情報の一元管理という中核業務については、依然として紙媒体・個別ファイルへの依存が残る課題がありました。当校は学生定員を150名から225名へ増員済みであり、今後350名程度まで拡大予定です。現行の教職員体制は常勤教員12名・非常勤教員5名・常勤事務職員8名・アルバイト4名ですが、2026年10月には教員3名・事務職員1名を増員し、350名体制移行時には教職員38名規模となる見込みであり、この規模拡大に耐えうる情報管理基盤の整備が急務となっています。

当校は2025年10月に汎用タスク管理ツール「Zoho Projects」を試験導入しましたが、多機能・多目的な汎用ツールゆえに操作が煩雑で当校の業務要件を満たせず、教職員への定着が進みませんでした。結果として一部業務はZoho Projects上、残りは従来通り紙・個別ファイルで管理する状態が混在し、既存の情報分散という課題にシステムと紙の二重管理という新たな混乱が加わりました。

この経験を踏まえ、クラウド型タスク・スケジュール管理システム「TASCA」(civichub開発、Google Cloud基盤)を、当校の業務特性に即した設計・伴走支援のもとで導入し、案件・スケジュール・書類情報の一元管理と確実な定着を図ります。

3-3-4. 教育DXとの連携による業務効率化

教育のDX化(3-2)によって蓄積される学生の学習データ・評価データは、事務側の進路指導・保護者対応・在籍管理等の業務においても活用できます。教育部・事務部間でこれらのデータを共有・連携させることで、部門を横断した学校運営全体の業務効率化につなげています。

4. DX推進体制と人材育成

推進体制

当社では、教育部と事務部とで留学生への関わり方が本質的に異なり(教育部=授業・学習指導、事務部=在留資格対応・生活支援・進路支援等)、業務の性質が明確に分かれています。そのため、DX推進にあたっては全社一律の体制ではなく、教育部・事務部それぞれから担当者を選出したDX推進チームを組成し、各部門の業務特性に即した形でDX化を進める体制としています。

  • 代表取締役:DX戦略の統括、経営判断、重点施策の決定
  • 取締役事務長:DX推進実務の統括(新規事業開発・教育DX・業務DXの各施策の実行責任者)
  • 教育部・事務部の選出担当者によるDX推進チーム:各部門の業務実態に即したDX施策の企画・運用・定着
  • 外部パートナー:株式会社civichub(TASCA開発元、アプリ共同開発パートナー)

当社は、経営陣主導のトップダウンな形式的デジタル化にとどめず、現場の従業員が自発的にDXに取り組める組織文化の醸成を重視しています。この結果、従業員から新たな発想が生まれ、組織の業務効率化が飛躍的に向上しています。

人材育成・確保

教務にはChatGPT、事務にはClaudeというように、業務特性に応じたAIツールを適正に配布し、それぞれの使用方法に関する研修を定期的に実施しています。この取り組みにより、若手からベテランまで世代を問わずAI活用への抵抗感のない組織風土を実現しています。加えて、TASCA運用担当者の育成、アプリ開発に関する要件定義・仕様策定力の社内蓄積(civichubとの協業を通じた実践)を進めます。

5. ITシステム環境の整備

当社は、DX戦略の実行に必要なITシステム環境として、クラウド情報基盤、AI活用基盤、ネットワーク基盤、教育デバイス基盤、タスク管理基盤の整備を進めています。

クラウド情報基盤

Google Workspace(Chat・Meet・ドライブ・スプレッドシート・ドキュメント・スライド)を全社共通の情報基盤とし、教育・業務双方の情報を同一システム上でリアルタイムに共同編集できる環境を整備しています。

AI活用基盤

教務にはChatGPT、事務にはClaudeを業務特性に応じて配布し、アカウント管理・利用ルールの整備とあわせて運用しています(活用の詳細は3-3-2に記載)。

ネットワーク基盤

学生数の増加(350名規模を想定)と教育・業務双方でのクラウド利用拡大を見据え、最大500端末の同時接続に耐えうる大容量ネットワーク機器への更新を進めています。

教育デバイス基盤(iPad・MDM)

学生向けにMDM(モバイルデバイス管理)制御下のiPadを導入することを決定し、年内に順次展開します。これにより、試験運営・会話評価・作文評価等の教育活動をデバイス面から支える基盤を整備するとともに、デバイスの一括設定・アプリ配布・セキュリティポリシーの適用を一元管理できる体制を構築します。

タスク・スケジュール管理基盤(TASCA)

クラウド型タスク・スケジュール管理システム「TASCA」(Google Cloud基盤)を導入し、案件・スケジュール・書類情報を一元管理する環境を整備しています。

6. DX戦略の成果指標

当社は、DX戦略の進捗と成果を把握するため、以下の指標を設定します。

分類

成果指標・KPI

目標

業務のDX化

教職員一人当たりの事務作業時間

TASCAの導入により、1日15分削減

情報の一元化

TASCAへの案件・スケジュール情報の一元化率

100%

新規事業

資格外活動許可管理アプリの自校運用

2026年11月に運用開始

業務効率化・リスク対応

資格外活動トラブルへの対応期間・対応能力

現状の約3週間から2〜3日に短縮し、同時多発時にも対応可能な体制を構築

新規事業

資格外活動許可管理アプリの外部展開

2027年6月に外部の日本語学校への販売を開始

教育のDX化

学生向けiPad・MDMの導入

2026年10月に導入開始

データ活用

技能別到達度データの記録・分析対象クラス割合

100%

人材育成

AI活用研修の実施頻度

3か月に1回定期実施し、新入社員入社時・課題発生時にも随時実施

DX推進体制

DX推進チームの定例活動

月1回以上実施

これらの指標は、学生数拡大等の事業環境の変化に応じて定期的に見直し、DX戦略の改善に反映します。

7. 経営者メッセージ

さきたま国際学院株式会社は、「日本語教育を通じて、外国人材が日本社会に確かに定着し、活躍できる未来をつくる」ことを理念に掲げ、埼玉県行田市を拠点に日本語学校を運営しています。

少子高齢化が進む日本において、外国人材の受け入れと日本語教育の充実は、もはや一部の業界だけの課題ではなく、社会全体で取り組むべき課題となっています。AI・クラウド技術の進展により、当校のような中小規模の教育機関であっても、これまで大きな組織でなければ実現しにくかった、学生一人ひとりのデータに基づくきめ細やかな教育や、業務の効率的な運営が可能になりつつあります。

一方で、単にシステムを導入するだけでは成果にはつながりません。当校は、業務の実態に合わないツールはかえって現場を混乱させるという経験を通じて、教育現場・事務現場それぞれの実態を理解し、必要なデータを整理し、現場が自発的に使いこなせる形でデジタル技術を活用することの重要性を学びました。

当校自身も、クラウド共同編集基盤による情報共有、教務・事務それぞれの特性に応じたAI活用、そして業務システムの導入による業務の一元管理を実践し、そこで得た知見を、留学生の資格外活動許可管理という社会課題の解決に向けたアプリ開発という形で還元していきます。

AIやクラウドの活用により、業務のスピードと質は大きく向上します。しかし最終的に学生一人ひとりの人生に向き合い、責任を持つのは、教職員一人ひとりの判断です。当校は、テクノロジーと人の力を組み合わせながら、学生が安心して学び、日本社会に定着していけるための実践的なDXを推進してまいります。

さきたま国際学院株式会社
代表取締役 大竹敏朗

公開日:2026年08月06日